No.99 小山 佑也 |
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京都国立博物館
京都国立博物館の開館110周年記念「美のかけはし」展に行ってきた。この展示では京都国立博物館の所蔵する文化財のなかでも、著名なものが常設ではなく企画展として展示されていた。大体が巻物や絵であって、それも平安期や鎌倉期のような古い年代のものばかりであったのだが、そのなかに、片山東熊作の建築図面が展示してあった。片山東熊は東京駅設計の辰野金吾とともに、明治時代に日本に輸入された様式建築を日本人の手で日本の地に建てた第一世代であり、赤坂離宮を建てるなど日本の明治期にとっての重要な建築家である。展示された図面は非常に精密な仕事が感じられるものであり、コンピュータの時代と大して変わらないようなものに見えた。図面は京都国立博物館の設計図であり、図面の横にはレリーフ部の試作品実物が飾られていた。図面は正面ファサードを描いたものだったが、その細部を三次元にした、横においてある試作品レリーフにとても驚かされる。ここに入ってくる時に外観を見ただけでは何も感じなかったが、このレリーフは平面図を見て作ったとはとても思えない精密さであった。日本には「西洋建築を作り上げたことのある職人やそれを教える職人」はいなかったはずだから余計に感心した。お雇い外国人から教わったり、海外に建築を見に行ったりしてなんとかして技術を習得したにしてもその苦労は並大抵ではなかったであろう。現在と違って三次元CADや立体の試作品を切り出す精密機械がない時代に、図面だけを頼りにして、日本にはなじみのない造形を作り上げた職人たちは設計者片山東熊よりも尊敬に値するだろう。今展示物を見ているその建物の内部の、本物のレリーフを手で触りながら図面と試作品に見入っている自分がいた。
06/08/03 22:43
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