No.17 小垂 優 |
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「ナカあばあちゃんの話」
先日、山口県の祖母のところに帰った。 祖母は帰省するたびに昔のいろいろな話を聞かせてくれるが、今回は祖母の祖母、つまり私のひいひいおばあちゃんのナカおばあちゃんの話であった。
ナカおばあちゃんは1845年生まれ。12代将軍家慶が天下を治めるバリバリの江戸の生まれである。 「いやでござるよペリーさん」の語呂合わせで知られる、黒船来航が1853年のことであるので、この時代の古さが伺えよう。
ところが、このナカおばあちゃん、娘時分から3日にあげず頭がいたい、頭がいたいと寝込んでばかり。そのせいで家事すらできず結婚するが、偶然にも家庭的な婿殿であったため、結婚した後も安心したように、ナカおばあちゃんの寝込んでばかりの生活は続く。子供ができても孫ができても続く。
しかし、寝てばかりの生活が体によかったのか、晩年にしてナカおばあちゃんは元気になってしまった。 すると、「暇なので何か仕事をしたい」と言うようになり、それならばと息子が「ワラで縄を作ってみてはどうか」とすすめた。 昔はどの家も茅葺き(かやぶき)の屋根で、屋根の骨組みと茅をしばりつけるのに、縄の需要が十分にあったのだ。 こうして、ナカおばあちゃんは人生で初めて仕事をすることになった。
ところが、この「縄」が当たってしまった。 ナカおばあちゃんの縄は、丈夫だと評判になり、ついには近所や、隣町からまでも、注文をとるほどになったのである。
縄で儲けたお金で、ナカおばあちゃんは自分の墓をたてた。 そして、人生50年と言われた江戸時代にナカおばあちゃんは、なんと85歳まで生きたのである。
写真は、ナカおばあちゃんの墓に咲いていたスイセンのつぼみ。 祖母の話によると、暖かい日が続けば、あと2,3日で花が開くらしい。
06/03/15 13:41
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